デジタル時代の著作権


先日、中国から帰ってきた友人が、「中国には海賊版のDVDがたくさん売っている。嘆かわしいことだ」と
大声で言うので、なぜ嘆かわしいのかと聞くと「著作権違反だから」と答える。
さらになぜ中国の著作権違反が嘆かわしいのかと聞くと「日本の産業にとって打撃だから」というのです。
つまり、中国で売られる海賊版のせいで、日本が輸出する正規のDVDが売れないため、日本は損をしている、というのです。
そこで私が、君は最近までWinnyを使っていなかったか、と聞くと、彼からは答えがありませんでした。


自分でも意地の悪い質問をしてしまったとは思いますが、
べつに私は彼を攻撃したかったのではなく、海賊版とファイル交換ツールの間に、
何がしかの違いがあるとのであれば、その意見を聞いてみたかったのです。
一般的に、海賊版Winnyなどのファイル交換ツールは「違法」である、とされており、
「違法」である理由が単純に「金銭的機会損失」であるのなら、
海賊版Winnyでのダウンロードも著作権物の販売元にとって大きな違いがないのではないでしょう。
個人的には、両社の間にはパッケージの製造や翻訳作業など、周辺雇用の有無という違いがあり、
これが著作権元とコピー元の社会において、どんな影響があるか、という点に興味があったりします。


別の観点でいえば、そもそも海賊版やファイル交換ツールは「なぜ違法なのか」とも考えます。
正規の著作権物が売れない理由は、コピーが容易になったため、価値に対する価格が高くなったためでしょうが、
いまさらコンピュータをこの世から消し去ることができない以上、
本質的に著作権元の金銭的機会損失はさけられず、避けられない以上、機会損失も存在しない、
であれば、そもそもコピーが違法といえるのかどうかは疑わしくなってきます。
海賊版やファイル交換ツール」と「レンタルビデオや中古販売」の間には、
金銭的機会損失の規模差という以外に、どんな違いがあるのか、私にはよくわかりません。


もちろん、他人の家のドアをあけられる合鍵が手元にあるからといって盗みに入ってもいい、
というわけではないので、違法行為を肯定するつもりはないのですが、
海賊版撲滅キャンペーンやコピー10問題などをすべてひっくるめて、
デジタル社会における著作権を、私たちはどう扱っていくべきなのかという観点には興味をもってウォッチしていきたいと思います。